社長ブログ

ハラスメントが疑われる社内相談の初動対応と信頼回復の手順

職場におけるハラスメントの問題は、企業規模に関わらず重大な経営リスクとなります。 特に中小企業においては、限られた人材資源の中で発生するトラブルが、経営全体に深刻な影響を及ぼすこともあります。 そのため、社内でハラスメントが疑われる相談が持ち込まれた際には、初期対応の質が極めて重要です。

相談者にとって、最初に接する会社の対応が信頼関係を左右するきっかけとなります。 また、企業側が適切に対応できなければ、被害拡大や外部通報、最悪の場合には訴訟に発展するリスクもあります。 したがって、本記事では中小企業の経営者や人事担当者に向けて、初動対応の基本から信頼回復に至る具体的な手順までを、平易な表現で解説いたします。

なお、本記事でいう「中小企業」は、中小企業庁が定める定義に基づき、資本金または出資総額が3億円以下、または常時使用する従業員数が300人以下の製造業、またはサービス業・小売業・卸売業などでそれぞれの基準に該当する企業を対象としています。

まず、ハラスメントが疑われる社内相談とは、従業員が職場での不適切な言動により、精神的・肉体的に苦痛を感じたことを上司や人事に訴える行為を指します。 この相談には、明確に「ハラスメントです」と表現されるものもあれば、「ちょっと困っています」という曖昧な表現も含まれます。

ハラスメントには、上司から部下へのパワーハラスメントだけでなく、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメント、さらには同僚間や部下から上司への逆ハラスメントなども含まれます。 中小企業では組織が比較的コンパクトであるため、個々の人間関係が密接になりやすく、特定の社員に偏った力関係が生まれることがあります。

そのような背景から、何気ない発言や態度が、相手にとっては深刻なハラスメントと受け取られることも珍しくありません。 相談が寄せられた段階では、加害者とされる側に自覚がないケースも多く見られます。 したがって、企業側が「これはハラスメントだ」と一方的に決めつけるのではなく、まずは状況を丁寧に聞き取る姿勢が必要です。

また、相談者が直属の上司や同僚ではなく、別の部署の管理職や外部窓口に相談してくる場合もあります。 その背景には、社内に対する信頼感の有無が反映されていると考えられます。 したがって、相談が寄せられた時点での初期対応が、会社全体の信頼性に関わると言っても過言ではありません。

この章では、ハラスメントの相談内容がどのようなものか、またそれが表面的に現れたときにどのように受け止めるべきかについて理解を深めていただくことが目的です。

ハラスメントの相談における初動対応とは、最初に相談を受けた段階で、企業としてどのように受け止め、どのような対応姿勢を見せるかを指します。 これは、相談者本人がその後も社内で安心して働けるかどうかを左右する大切な局面です。

初動対応を誤ることで、相談者が「自分の訴えは軽視された」と感じる可能性があります。 その結果、社外の労働相談窓口や弁護士、SNSへの投稿など、会社の対応が及ばないところへ話が広がるリスクがあります。

また、対応が遅れたり、不誠実であったりすると、職場内に動揺が広がり、他の従業員のモチベーションや信頼感を著しく損ねる原因となります。 中小企業においては、社員一人ひとりの役割が大きいため、こうした風評リスクは経営に直結しかねません。

加えて、厚生労働省が発行している「職場におけるハラスメント防止対策マニュアル」でも、初期対応の大切さが強調されています。 たとえば、相談者の意見を真剣に聞き、記録を残すこと、事実確認のプロセスを整えること、守秘義務を徹底することなどが求められています。

つまり、企業として信頼性を守るためには、相談があった瞬間から既にハラスメント防止体制が試されていると考える必要があります。 経営者や幹部がその重要性を理解し、社内での行動基準として定着させることが、問題の早期解決につながるのです。

この章では、初動対応を軽視することのリスクと、なぜ初期対応がこれほどまでに重要なのかを解説いたしました。

ここでは、ハラスメント相談を受けた際に企業側が取るべき初動対応の流れを、5つのステップに分けて解説いたします。 これらの対応は、相談者に安心感を与えるだけでなく、企業としての信頼性を保つための重要なプロセスでもあります。

まず第1ステップは、相談者の話を真摯に傾聴することです。 この段階では、判断を下すことよりも、まず相手の気持ちを丁寧に受け止める姿勢が大切です。 相手の話を途中で遮らず、否定せずに最後まで聞くことで、信頼関係の第一歩が築かれます。

次に第2ステップとして、守秘義務の確認と安全確保が求められます。 相談内容を他言しない旨を伝え、必要に応じて面談場所や連絡手段の調整を行いましょう。 相談者が安心して話せる環境を提供することが、継続的な対話につながります。

第3ステップは、主観と事実の切り分けを意識した情報収集です。 相談者の感情を尊重しつつも、客観的な事実がどのように認識されているかを確認することが重要です。 この段階での記録は、後の調査や対応方針を定める際の大きな判断材料となります。

第4ステップとして、相談内容を記録に残すことが必要です。 メモではなく、できればフォーマット化された相談記録書に記入する形が望ましいです。 この記録には、日時、関係者、発言内容、相談者の反応などを含め、できるだけ正確に記載しましょう。

最後に第5ステップは、社内規程や外部機関との連携可否を検討することです。 社内にハラスメント防止委員会がある場合はその活用を検討し、必要に応じて社労士や弁護士に事前相談を行いましょう。 これにより、法的観点からの対応が漏れなく実行できるようになります。

以上が、初動で取るべき5つのステップとなります。 これらを適切に実行することで、問題を社内で円滑に処理する基盤が整い、信頼回復への第一歩となるのです。

関連記事

TOP