ハラスメントのない働きやすい職場環境作りをサポートします、リスクコンサルタントの水口です。
経営者の皆さまからのご依頼によるスタッフとの面談も私の仕事です。
先日も、上司とのやり取りに心が折れて早退し、翌日欠勤してしまったスタッフと、数日後に会いました。
「何があったの?」と切り出すと、
「どうせ言っても無駄でしょ…」 と言いながらも「結局、部長は自分の考えしかないから、僕が何を言っても聞いてくれないんです。いつもそんな感じだから、最近はちょっとビクビクしていました」と、私にその時の状況を話し始めました。
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『なんで直ぐに荷物を取りに来なかったんや!車が着いたことぐらいわかるやろ!』
って大声で怒鳴られました。少し遅れて荷物のところに行ったんですけど『もうええわ!』って言われて…
そう言われても仕事中ずっと部長の様子を見ているのは無理でしょ?
ひと言、普通に声を掛けてくれればいいだけじゃないですか・・・
なんでできない?っていわれても、直ぐに行けなかっただけで、理由ってないです。
その時の事情を話そうとしたんですが、また言い方間違えると何か言い返されるなあって思って、
・どう言おうか ・どこまで言おうか ・それ以上聞かれたらどうしよう
って言うのを迷ってたんです。 そのうち、部長が
『前もそういうことあったやろ』とか『同じ担当の〇〇さんは、あれぐらいの言い方でも気にしないし、別に悪気があって言ってないで』って言い始めて… 僕も、もういいわって思って結局何も言いませんでした。
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日常のやり取りの中で、自分の言動がハラスメントに当たると気付いていない上司は意外に多く、特に、昭和世代と平成世代とのミスコミュニケーションはどの職場でも頻繁に起きています。
管理職も部下に気を遣っているつもりなのですが、管理職の多くが陥っている現象の一つに
【沈黙が苦手、相手の答えを待つことができない現象】があります。
事例でも上司は部下の「沈黙」、いわゆる「間」に耐えることができませんでした。
- 管理職が、沈黙に耐えきれずに、自分の言葉(意見)で間を埋めてしまうケース
- 意味のない確認で、沈黙を埋めてしまうケース:「わかるか?」「大丈夫か?」
- 管理職の最初の「問い」が「曖昧」なために、まったく対話がはじまらないケース
そんな現象を社内で感じたら要注意です。
注意や指導の場面、あるいは会議の場面でも、意見を求めてもなかなか発言が出ないという状況が皆さんの会社で生まれているとしたら、この3つのパターンにはまっていないかを、ぜひご確認いただければと思います。最も大切なことは、問いを出したら「待つこと」です。(もちろん限度はありますが)沈黙にイライラしないことです。部下が考えるための時間、思考回路を回す時間、自分の意見をまとめる時間を待つ、その結果として部下の主体的な思いや考えを聴くことができます。
主体性を持った言葉(本心)が出るために必要なことは「働きかけること」ではなく、相手の主体的行動(=話したい意思)を「待つこと」です。返ってきた言葉が予定調和で終わらせようとしていないか、しっかりと聴く、出てきた意見は自分の考えと違っていてもしっかりと受け止める。
ひとり一人が認められていると感じる組織風土にスタッフは仕事への自信と誇りを感じ、そこに感謝が加わることで、会社という組織がより強固となり、上司の厳しい言葉、高い要求も『当然』と受け容れることができる組織に変っていきます。承認し合える風土作りがハラスメント防止の第一歩、上司はそのための傾聴力を付けましょう。