社長ブログ

『メンパ(メンタルパフォーマンス)』という新しいトレンドワードとは?

近年、「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が広く浸透しました。
限られた時間の中で、いかに効率よく成果や満足感を得るかを重視する考え方です。
そして現在、その延長線上にある新たな価値観として注目されているのが、「メンパ(メンタルパフォーマンス)」というワードです。
これは、「自分の心がどれだけ消耗するか」「精神的に疲弊しないか」を重視する考え方を指します。
この言葉はもともとマーケティングの世界で使われてきた若年層を中心に広がっている風潮を指す言葉なのですが、実は今マーケティングだけでなく、企業マネジメントや組織運営にも大きな影響を与える言葉として認識され始めています。

「何を言ってもハラスメントになりそうで怖い」
「若手社員の指導が難しい」

こうした現場の悩みの背景には、単なる世代論ではなく、“メンパ社会”への移行があります。
今回は、この「メンパ」という新しい社会潮流について、企業経営や組織マネジメントへの影響という視点から考えていきます。


最近、マーケティングの勉強会や経営者コミュニティなどで、「メンタルパフォーマンスを重視する人が増えている」という話題が頻繁に出るようになりました。
メンパとは、「心の負荷をできるだけ減らしたい」という感覚です。

例えば、
・怒られたくない
・気まずい空気を避けたい
・失敗して落ち込みたくない
・人間関係で神経を消耗したくない

といった心理が行動の判断基準になっているのです。
一見すると、「心理的安全性」と似ているようにも見えます。しかし、心理的安全性は、本来「安心して挑戦できる環境」を意味します。つまり、失敗や意見対立があっても、成長のために発言ができる状態です。

一方、メンパは、「そもそも精神的に揺さぶられたくない」という感覚に近く、“摩擦回避”が最優先になります。
その結果、組織内で本音の議論がなくなり、『ことなかれ主義』が広がるリスクをはらんでいます。


最近では、社会的な事件やトラブルの背景にも、「タイパ」「メンパ」的価値観が影響していると言われています。
例えば、最近話題となったプロ野球 巨人 阿部監督の事件についても、「感情的負荷を避けたい」ということで、家族間の問題が家族内で意見や主張をぶつけ合うことなく生じた結果として、その関係性がちまたで議論されたりもしました。

もちろん、過度な叱責や理不尽な指導は問題です。しかし一方で、“少しでも不快なら避ける”という価値観が強くなりすぎると、人が成長するために必要な摩擦や葛藤まで失われてしまいます。
そしてこれは、現在40代とかの大人社会にも広がっているのです。
上司は部下を怖がり、部下は上司を警戒する。その結果として、誰も相互に踏み込まない組織になるのです。

また、最近では若者のAI依存も課題として挙げられています。悩みをChatGPTなどに相談する若者が増えていますが、AIは基本的にネット世界の中で公開されている情報をとってきますので、どちらかというとあたり障りの無い“摩擦を起こしにくい回答”を返してきます。
そのため、自分で深く考えたり、人とぶつかりながら答えを見つけたりする機会が減っていて、安易に「AIの回答」を「自分の意思」に置き換えてしまうことが増えているのです。

つまり、便利さの裏側で、人同士の摩擦を避ける結果として、人間としての思考力や対話力が弱体化している傾向がみられます。


現在、多くの企業で30〜40代の管理職が苦しんでいます。

「どこまで言っていいか分からない」
「注意したらハラスメントと言われそう」
「指導方法をマニュアル化してほしい」

このような声は非常に増えています。しかし、本来マネジメントとは、単純なマニュアルで対応できるものではありません。
人によって価値観も、受け取り方も違うからです。

また、若い世代には、「平均より少し上で十分」という感覚も広がっています。
100点を目指すより、80〜85点で安心したい。突出するより、周囲と横並びでいたい。これは競争を避けたいという心理の表れでもあります。

そしてさらに特徴的なのが、「職場など公の場では個性を隠す」という傾向です。例えば大学では、クーラーが寒くても誰も止めに行かない。自分の行動でその場の雰囲気を僅かでも乱したくないからです。
その一方で、プライベートでは趣味や推し活に強い個性を発揮します。
つまり“安心できる場”でのみ感情を解放するのです。
しかも、この傾向は20代だけではなく40代においても結構見られる傾向になっています。


こうした時代において、ひとつ注目されているのがシニア人材の活用です。
実際に、食品大手のカルビーでは、2024年4月にシニア社員制度を改訂し、70代人材の活躍を後押ししているのですが、興味深いのは、20〜30代の若手社員が、30〜40代管理職よりも、60~70代のベテランの話を素直に聞くケースがあることです。
なぜなら、そこには“経験の重み”があるからです。実体験を伴う言葉には説得力があります。
また組織の変なタテ社会の序列も感じにくく、シニアの懐の深さもあり、例えば、「若い頃、自分もこんな失敗をした」とか「掃除を徹底する意味はあとからこういうことだと気づいた」
といった体験談は、単なる指導ではなく、人生経験として共感として伝わります。

逆に、人生経験も長くない上司が自身の仕事上の思いだけを語っても、押し付けに感じられる場合が多々あります。
それゆえ、“レジェンド世代”に教育や対話の役割を任せることは、非常に有効な選択肢になり得るということです。


メンパ社会において、企業が最も重要視すべきものの一つが、「フィロソフィー(経営理念)」の構築と浸透です。
なぜなら、人は「何を大切にする会社なのか」が見えないと、不安になるからです。
特に今の若い世代は、価値観の軸を求めています。逆に言えば、会社としての考え方が曖昧だと、社員は毎回空気を読みながら行動することになります。
これは非常にメンタルロスが大きい状態で、常に不安が付きまといます。

とは言うものの、実際にはフィロソフィー作りで苦戦される企業も少なくありません。
言語化しようとすると意見がまとまらないのです。背景には、教養や対話力の全体的な低下もあります。

本来、理念とは“美しい言葉”を並べることではなく、会社として「何を信じ、どう行動するのか」を明確にすることです。
経営層と管理職層がそこに明確なビジョンや理念を持っている場合は、それを言語化することができますが、それは仮に経営者一人が持っていても、他の取締役や管理職層に共感されている状況でなければ、なかなかまとめていくのは困難な作業になります。
そういった場合には、専門家のサポートを受けながらフィロソフィー(経営理念)をまとめていくことも有効な手段です。

また、理念は作って終わりではありません。入社時や年に1~2回皆で読んだだけでは、まったく意味がありません。
定期的な読み返し、対話、フィードバック、行事化など、“習慣化”にまで設計し、実行していくことが大変重要な取り組みになってきます。


現在、私立大学においては教育の専門学校化が進行しています。そして中には「就職のための教育」に偏り、本来の教養としての教育が弱くなっているケースがあります。
もちろんエキスパートとしての人材を育てることは必要ですが、しかし、社会において大変重要となるコミュニケーション力は、幅広い「教養」と「人間力」が大事な要素になります。
言葉は“記号”であり、同じ言葉でも、人によって意味の受け取り方が違います。
だからこそ、背景知識や歴史観、人間理解といった「教養」が必要になるのです。

「教養」があり幅広い文化を語れる上司は、自分や自社の価値観を押し付けるのではなく、受容力と柔軟性があり、相手の価値観を尊重し、信頼関係を構築するスキルが高いと言います。そのような幅広い知識を得る時間がないといった方もいらっしゃいますが、最近はネット動画も含めて、「教養」を高めるための様々な手法がありますので、自ら積極的にそういった取り組みをしていくことも、社会人としての成長のためには大変重要なこととなっています。

そして「人間力」も重要です。人は正論を述べるだけでは動きません。
「人間力」が高い人とは、単なる知識だけでなく物事の本質を見抜く力や論理的思考力、新しい価値を生み出す創造力などに富み、チームワークやリーダーシップ、他者への思いやりを持ち、困難な状況でも諦めない忍耐力や、感情や欲望をコントロールする自律心を持っている人のことを言います。

もちろんこれらの「教養」と「人間力」は、簡単に身につくものではありません。弛まない学びの継続が必要になってきます。
そういう意味では、特に経営層や管理職層の人は、日常の生活の中に「教養」と「人間力」を高める場を取り込んで、自身の継続的な成長をはかっていくことが大切です。


メンパ社会では、顧客向けマーケティングと、従業員向けマネジメントは切り離せません。
顧客が「どう生きたいか」を理解する感性と、従業員が「どう働きたいか」を理解する感性は、実は同じだからです。
ロート製薬では、山田会長が「人間理解」を徹底して追求していることで知られています。
顧客満足だけでなく、従業員の働きがいや価値観にも深く向き合っている点が特徴です。

つまりこれからの経営者には、“人間を理解する力”が求められるのです。
特に中小企業では、人材・時間・資金に限界があり、大企業のような大規模教育制度をそのまま真似することはできません。
だからこそ、「人をどう理解するか」という本質的な力を養っていくことが大変重要になってきます。


「メンパ」という言葉は、単なる流行語ではありません。
それは、現代人の価値観や不安、社会構造の変化を象徴するキーワードです。そして、この変化は、企業マネジメントに大きな影響を与えています。

これからの時代は、
・心理的安全性をどう築くか
・世代間ギャップをどうやって軽減するか
・『理念』をどう浸透させるか
・「教養」や「人間力」をどう育むか

が、企業経営の重要テーマになります。
特に中小企業では、限られたリソースの中で、人と組織をどう機能させるかが問われています。だからこそ今後は、単なる制度設計だけではなく、“人間理解に基づくマネジメント”がますます重要になっていきます。
そして、その実現には、企業内の組織風土や従業員のメンタル改善に関する専門的知見を持つ第三者の支援も、大きな力になるはずです。

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